途端、熱を伴う激痛が脳を貫いた。
傷口から真っ赤な血が流れて来た。
あまりの恐怖と痛みに怖じ気づきそうになったけど、逃げ去る中年男を逃がしたくなかった。
「ろ‥ロナ‥。」
泣き顔になる七海を安心させたくて
「大丈夫!アイツ追い掛けて捕まえてやる!」
切り付けられた左腕を押さえ、あたしは足を踏み出した。
だけど
「ぼ‥、僕が行く!ロナはチヒロをお願い!」
七海は、そう言うと走り出した。
「七海くん!待って!」
あたしの止める声も聞かず、一度も振り返らずに七海は犯人を追い掛けた。
チヒロは放心状態のまま、ソファに横たわっていた。
異変に気付いた店員が部屋にやって来た。
あたしは事情を打ち明け、すぐさま警察に通報して貰うことになった。
そして、放心したままのチヒロと共にフロントへと向かった時、救急車のサイレンの音が けたたましく響いてきた。


