Bloody Kiss♡


   

男は片手にナイフを持っていた。

それを使ってチヒロを脅したんだってことは、中学生だったあたしにも、容易に察知出来た。


天井から射す オレンジ色のスポットライトがナイフをギラつかせている。

身じろいだ時、背後にいた七海とぶつかった。


「ロナ‥。」


七海の声は震えていた。

あたしがしっかりしなきゃと思った。


なのに、凶器を前に体は動かなくて、出入口を塞ぐように硬直したまま立ちすくんでいた。


「どけ!ガキ!」

怒鳴り声と共に男はナイフを振りかざし、半袖から伸びたあたしの腕を切り付けた。