Bloody Kiss♡

 

扉を開けると男の背中が見えて、その下敷きになるようにチヒロの体が見えた。


「チヒロ!」

彼女のデニムのスカートが膝下まで、ずり落ちている。


「なにやってんねんっ!おっさん!どけや!!」

頭に血が上ったあたしは、そう怒鳴っていた。


振り返った男は、大学生なんかじゃなかった。

髭面で、どう見たって中年の男だった。


顔が見えないネットの世界では、自分をどんな風にも偽ることが出来る。

狂暴性を隠して優しいフリをすることも、異常な性癖を隠して紳士なフリをすることも。

他人の写メを自分だと偽って、相手を騙すことさえ出来る。


陰気な顔の中年男はチヒロから離れると、無表情のまま ものすごい勢いでこちらに近付いて来た。