扉を開けると男の背中が見えて、その下敷きになるようにチヒロの体が見えた。
「チヒロ!」
彼女のデニムのスカートが膝下まで、ずり落ちている。
「なにやってんねんっ!おっさん!どけや!!」
頭に血が上ったあたしは、そう怒鳴っていた。
振り返った男は、大学生なんかじゃなかった。
髭面で、どう見たって中年の男だった。
顔が見えないネットの世界では、自分をどんな風にも偽ることが出来る。
狂暴性を隠して優しいフリをすることも、異常な性癖を隠して紳士なフリをすることも。
他人の写メを自分だと偽って、相手を騙すことさえ出来る。
陰気な顔の中年男はチヒロから離れると、無表情のまま ものすごい勢いでこちらに近付いて来た。


