カラオケ店の向かいで、あたしはチヒロを待っていた。
お小遣欲しさに危険なことをしている彼女を、分かっていて止めることが出来なかったんだ。
途中で切れてしまったチヒロからの着信に、危機感を覚えた。
駆け出そうと足を踏み出した時、通り掛かった七海に声を掛けられた。
「ロナ!」
「あ!七海くん!」
「どしたん?こんなとこで。」
「チヒロが‥。」
それまでの経緯を説明すると、七海は「一緒に中に入ろう」って言った。
「いいの?」
「当たり前やん!早く行こ!」
閉鎖した工場の前、電信柱の側に自転車を停め、七海は あたしの腕を掴んでカラオケ店へと駆けた。


