「引き裂かれたいのか?その顔を。それとも火で炙(アブ)られたいか?」
冷静な声が恐怖感を掻き立てる。
あたしは、ブンブンと首を横に振った。
刃先のようなその爪が視界から離れない。
緑色の湿った指が薄暗がりの中、気味悪く光っていた。
─ この爪で切り裂かれたら‥
あたしは‥
今、目の前にある現実を否定したい。
こんな馬鹿げたこと、あっていい訳が無い。
「ブラッディキスは、どこだ!」
ナイフのように尖った爪をカエル男が振りかざした瞬間、あの日のことが脳裏を過ぎった。
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