「失礼します。」

事務所に入ると、店長は古びた合成皮革のモスグリーンのソファに座っていた。


「相田くん。ま、座って。」

「はい。」


指示された通り、店長の向かいに腰掛ける。


「なんか飲む?」

そう訊いた彼に

「じゃ、ジンジャーエールで。」

と答えて、ソファから立ち上がった店長を見ていた。


彼は二十代後半だけど、正確な年齢は知らない。

痩せていて色白で、浮世絵みたいな顔をしている。


肩まで伸ばした黒い髪を、後ろで一つに括っているけど、撫で付けた整髪料のせいか清潔感を感じない。

短いシッポみたいな毛束を揺らして、店長は事務所の奥にある衝立の向こうに消えた。