ホルスについて外に出ると、月明かりだけの暗い庭に車が一台停まっていた。
日本車のようだけど、よく分からない。
ホルスは、助手席のドアを開け
「どうぞ。」
と、促した。
あたしは、無言のままシートに座った。
運転席に座った彼は、スーツの胸ポケットから黒っぽい何かを取り出した。
よく見ると、スティックタイプのチョコクッキー。
─ 甘党なんや‥
何気に思った時、彼はチョコクッキーをイグニッションに差し込んで、エンジンを掛けた。
ブルルル‥と、煩い音を立て車は走り出した。
人間のやり方で‥って、セトは言ってたよね?
突っ込んでやりたかったけど命の危険を感じた今、そんな気力も無い。
庭を抜け、大きなアーチを抜けて道路へと走る車の窓に視線を遣って、驚きを感じる。
「ここって‥。」
あの日、歩いた道。
中学二年の夏に行ったカラオケ店の前だった。


