Bloody Kiss♡

 

階段を下り立つと同時、目の前にバッグとケータイが現れた。

「あ‥。」

思わず小さな声を漏らして、それらを手に取った。

「要るんだろ。」

不意に、ホールの奥、地下への入口から声がした。

意表を衝くのが趣味なのか、セトが交渉もなく返してくれたことに驚いた。


「いいの?」

返されて当然なのに、遠慮がちに尋ねている。

彼は、頷くと

「ただし、そのケータイには盗聴器を埋め込んでいるからな。下手に逃げようなんて思うなよ。仮にケータイを捨てるようなことがあれば、お前の命は保証しない。分かったな。」

有無を言わせぬ態度で、そう言った。


「ホルス、人間のやり方でロナを送ってやれ。」

「畏まりました。」


逃げ出せば、殺される。

暗にそのことを匂わされたように感じて、心臓はキュッと収縮した。

「監禁してバカみたく洗脳でもするつもり?」

あたしは捨て台詞を吐いて、セトを睨んだ。