「ロナ‥。」
弱々しい声で呼んで、セトは、あたしに赤ちゃんを手渡した。
段々と影が薄くなっていくのが分かる。
「ねぇ、泣き止んで。お願い‥、パパが消えちゃうよ‥。」
あたしは、赤ちゃんを抱きしめた。
「いいんだ、ロナ‥。もう覚悟は出来てる。」
「でも!」
「ありがとな、ロナ。愛してる‥。七海を頼んだぜ。」
その言葉を残して、セトは消えた。
─ 七海‥
セトが付けた名前。
「七海‥。」
あたしは小さく呼んだ。
「七海のパパはね‥、カッコイイ吸血鬼‥。すっごく優しくて素敵な吸血鬼なんだよ‥。」
赤ちゃんを抱きしめて、あたしは泣いた。
腕の中の七海は、スヤスヤと眠っていた。


