彼には、立ち会いも面会も断った。
「退院するまで、赤ちゃんに会うのは我慢して‥。落ち着いた場所で家族三人だけで‥。」
「分かってる。ちゃんと待ってるから行って来な。」
「うん。」
明るく答えて、あたしはタクシーに乗り産院に向かった。
赤ちゃんに会える喜びと、愛する彼を喪う哀しみが胸の中で絡み合っている。
残酷な未来に泣き出したくなった。
数時間後
「そろそろかな。」
触診した看護師は、あたしを分娩台へと誘導した。
繰り返す激しい痛みに襲われながら、あたしが産んだ赤ちゃんは、男の子だった。
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