三月、あたしは専門学校を卒業し、セトと結婚した。


仕事と家事の両立は、大変だけど楽しい。

幸せな日々は続いていた。


まだ夜が明ける前、セトは帰宅する。


「ん‥、おかえり。」


あたしはベッドの中で、寝ぼけながら彼を迎える。


その日は微かに血の匂いを感じて、週に一度の食事を済ませて来たんだと分かった。


バンパイアの彼の栄養補給源は、大型犬。

しかも、セレブ犬と決まっている。

いつだったか、大型犬が仮死状態で発見されている事件を、くるみが話していたけど‥。

犯人は、あたしのダンナ様だった。


過去に、狼族と吸血族はいがみ合っていた。

それは、狼の子孫である犬を吸血鬼が襲うことが原因。


セトの父親がホルスの父親を殺したって話も、他の魔族にも命を絶つ方法があるって話も、セトと示し合わせたホルスの作り話。

だけど、そんな過去のいざこざがあったから、あの時、魔王は疑いを持たなかったんだ。