裁縫は得意。
将来の夢は、アパレルショップを経営して、自分でデザインした服を売ることだった。
セトがいなくなった今、人間界に帰ることは疎か、魔王も消えた魔界でホルスがあたしをどう扱うかも分からない。
魔物達が騒ぎ出す前にと、あたしは裁縫を始めた。
一針一針縫うごとに
「だいすき‥。」
と、呟く。
伝えることの出来なかった想いを彼の魂に届けるように‥。
─ セト、だいすき‥
ねぇ、すきだよ‥
継ぎ接ぎだらけの黒い服の持ち主は、もういない。
あたしは、縫い合わせたセトの服をギュッと抱きしめた。
彼と過ごした数日間がココロの中に甦る。
布に残るラルフローレンの香りに、また涙が潤んだ時
「なかなか斬新なデザインだな。気に入ったぜ。」
─ え‥?
顔を上げると、黒いマントに身を包んだセトが目の前にいた。


