「つまらぬ妄想は、そこまでだ。花嫁よ、お前は人間界を征服する我が子を、最強のサタルドを宿すため、魔界に来たことを忘れたわけではあるまい。」
威厳に満ちた眼光で睨み、魔王は頑強な両腕を広げた。
「さあ、我に身を捧げよ。苦痛は悦楽となりて お前を支配し、我に力を与えるであろう。神と名乗る愚かな者共に敗北の辛酸を存分に与え、力の差を思い知らせてやるのだ。」
まるで、磁力に引き寄せられるよう。
あたしの体は意志とは関係無く、魔王へと近付いていく。
怖くなんてなかった。
今のあたしには、ルシフェルが虚勢を張った寂しいココロの持ち主としか見えていない。
愛されたくて、我が子を欲しているとしか思えないんだ。
「あたしが愛をあげる。ううん、愛を思い出させてあげる。可愛い天使を産んで、幸せなファミリーを作って‥。そうすれば、憎しみなんて消えるはず。ね、楽になれるよ。ここから飛び立つことだって出来るよ‥。過去の恨みに縛られず自由になれるから‥。」


