ルシフェルの本当の姿を見たのは、神だけ。
─ でも、違う‥
知っているのは、きっと‥
神だけじゃない‥
だって‥
「魔王‥。」
あたしはルシフェルを呼んだ。
ルシフェルは返事をする代わりに、その釣り上がった目であたしを見つめた。
「あたし‥、産む。あなたの子どもを‥。」
「ならば、話は早い。」
「でも、産むのはサタルドじゃない。天使‥。あたしが産むのは天使‥。だって、あなたは、大天使ルシファーやもん‥。」
大天使ルシファーは、神の怒りを買い天界を追放された。
そして、堕天使となり悪魔へとその姿を変えた。
「あなたは愛を知ってる。ホントは愛に溢れた天使だったから‥。だから、愛を利用してマリィを騙した。七海に姿を変えて、あたしを騙そうとした。愛を知ってるから愛を利用しようとした。愛を知らないなら、そんなことは考えもつかないもん。そうでしょ?」
話しながら涙が潤んできた。
例え、神の怒りに触れた行いをしたとしても、大天使だったルシファーが堕天使に身を堕とすなんて、きっと屈辱でしか無かったはず。
時に、憎しみは愛をも上回る力を持つのかもしれない。
だから、ルシファーは愛を封印し、悪魔になって神に復讐しようとしたんだ。


