勝ち誇ったように剣を掲げ、遠吠えを上げるホルス。
その牙は、月光でギラついて見えた。
セトは穏やかな瞳で立っている。
その胸に向け、ホルスは剣を突き刺した。
まるで、切り刻まれた布のよう。
セトの体は無残に裂け、辺りにヒラヒラと舞い散った。
「セト‥。」
全身から力が抜けていく。
あたしは、よろめきながら床へと座り込んだ。
「ブラッディキスを我が物にしようと策を練るだけでなく、命令に背き幻惑鳥を使い、我が花嫁さえも利用して女神に手を貸していたとはな‥。馬鹿なヤツだ。しかし、思った通りにはなったが、魔族ともあろう者が下僕に同情し死を受け入れるとは、とんだ茶番だ。」
満足そうな笑みのルシフェルは、ホルスに下がるよう指示をした。
セトもホルスもいなくなった場所に、あたしはルシフェルと向き合っていた。
─ 逃げなきゃ‥
でも、どうやって‥?
考えて考えて、それでも何も策を思いつかないと諦めかけた時、ふと、天使の言葉を思い出した。


