Bloody Kiss♡



勝ち誇ったように剣を掲げ、遠吠えを上げるホルス。

その牙は、月光でギラついて見えた。


セトは穏やかな瞳で立っている。

その胸に向け、ホルスは剣を突き刺した。

まるで、切り刻まれた布のよう。

セトの体は無残に裂け、辺りにヒラヒラと舞い散った。


「セト‥。」


全身から力が抜けていく。

あたしは、よろめきながら床へと座り込んだ。


「ブラッディキスを我が物にしようと策を練るだけでなく、命令に背き幻惑鳥を使い、我が花嫁さえも利用して女神に手を貸していたとはな‥。馬鹿なヤツだ。しかし、思った通りにはなったが、魔族ともあろう者が下僕に同情し死を受け入れるとは、とんだ茶番だ。」


満足そうな笑みのルシフェルは、ホルスに下がるよう指示をした。

セトもホルスもいなくなった場所に、あたしはルシフェルと向き合っていた。



─ 逃げなきゃ‥

  でも、どうやって‥?



考えて考えて、それでも何も策を思いつかないと諦めかけた時、ふと、天使の言葉を思い出した。