悲鳴に似た声を上げた時、セトは立ち上がり、ホルスを制するように左手を前に出した。
「ホルス‥。お前の苦しみをオレは今知った。だが、無駄に戦おうとは思わない。オレを殺したいなら殺れ。この剣で心臓を突き刺せよ。そうすれば、お前の復讐劇は終わるさ。」
セトは、左耳のイヤカフに手を触れた。
その瞬間、イヤカフは十字架の柄を持った剣に変わった。
「さぁ、この機会を待っていたんだろ?なら、殺んな。過去に何があったのか、オレには分からない。覚えてねーし、今となってはバンパイアはオレだけだしな。でも、父の不末は息子のオレが償うさ。」
冷静に話し続けるセト。
その姿に胸が痛んだ。
「あたしは、どうなるの!セト!ホルスと仲直りしてよ!」
セトがいなくなるなんて嫌だ。
裏切り者なら悪魔と戦って、あたしと人間界に戻って欲しい。
「ロナ、お前なら切り抜けられるさ。」
優しい笑みを湛えて そう言うと、セトはホルスに剣を投げた。


