気を失っているセトに向け、体勢を低く構えるホルス。
「なんで?ホルス!ヤメてよ!」
あたしは叫んだ。
振り向いたホルスは、哀しい目をしていて
「私の父は月の無い夜、このバンパイアの父親に殺されたのです。」
と言った。
「え?魔物って消滅しても死なないんじゃないの?だって、セトは‥。」
“バンパイアに限っては‥” その方法があると言っていた。
「どの種族にも命を絶つ為の手段はございます。ただ、その方法を他の種族は存じておりません。それは、新たに魔王の座を狙う愚か者を封じるため。ですが、セトの父親は狼族を絶命させる手段を闇の力を使って知った。そして、昔から因縁のあった私の父親を殺したのです。そのことを幼かったセトは知りません。ですが、私には狼族の仇を討つ責任があるのです。」
言い終わると、ホルスはあたしに背を向けた。
そして、セトへと突進した。
「復讐なんて悲し過ぎるよ!ヤメて!」


