「気にしないで。また会えたんだから。それに見て。僕はセト神と同じくらい、いや、それ以上に強力になった。今は魔界の王、ルシフェル。地獄を牛耳るハデスに負けないくらい強力や。」
七海は立ち上がり、あたしに向けて両手を広げた。
背中には片方だけの黒い翼。
その翼が揺れる度、空気が微かに揺れた。
あたしは、彼の元に行くことを躊躇していた。
中学生の頃のまま、変わらない七海。
でも、何かが違う。
だって、七海は‥。
「絽那、どうしたん?」
七海はそう訊いて、答えないあたしに
「分かったよ。」
と、納得したように目を伏せた。
そして、
「セト、ホルス、下がれ!」
威厳に満ちた声で命令した。


