吸血鬼にしろ狼男にしろ、実際には存在しない。

あんなものは、魔物を信じていた時代の人間が作った架空の生き物でしかない。


そんなことを考えながら彼の背を見つめていると、不意にセトは振り向いた。

そして、

「冬休みだけなんつって、冬休みが終わる頃には、オレから離れらんねーかもなって、そろそろ日の出か。じゃ、寝るわ。」

茶化すように笑って、部屋を出て行った。


「もう!待ってよ!あたしの服、返せ!!」


閉まった扉の向こう、遠ざかる靴音に向けて怒鳴った瞬間だった。

静かに開いたクローゼットから、フリフリしたメイド服が飛んで来た。


「うっそ‥。」


背筋に ゾクッと奮えが走った。


もしかしたら‥

そう‥、もしかしたら‥

彼は、本物なのかもしれない‥

マジシャンでなければ‥