「ありがとう、ロナ。命ある限り生きていかねば‥、ですね。どんな状況下でも現世を誠実に生きていれば、きっと いつか願いは叶うのでしょう‥。やっと記憶を取り戻せたと言うのに、わたくしは大切なことを忘れるところでした。」

マリィに笑顔が戻った。


「これは、あなたへの感謝の贈り物です。」

差し出されたマリィの手のひらには、コルク栓をしたガラスの小鬢が乗っている。


「これって?」

そう訊いたあたしに、彼女は

「この小鬢を泉の水で満たしなさい。きっと、あなたの窮地を救ってくれるでしょう。」

と、言った。


不意に、空から蹄の音が響いてきた。

見上げると、羽を広げた天馬が二頭、こちらに向かって翔けて来た。


「ミュー、行きましょう。」

「はい、マリィ様。」


二人は天馬に乗って、白の空間から飛び出した。

残されたあたしは、マリィに言われた通りに真実の泉へと小鬢を浸し水で満たしたあと、コルク栓で蓋をした。