「で?その初恋は‥?」

初恋は叶わないなんてジンクスを ふと思い出し、不吉な結末が脳裏を過ぎった。


ミューは、重く溜め息を吐き

「周囲に知られれば命は無いも同然。それでも、マリィ様は恋心を抑えることがお出来になりませんでした。そのお気持ちは、ジョルジオ様とて同じ。お二人は、人目を盗んでは逢瀬を重ねておいででした。恋は盲目とは、よく言ったものですね。私どもの心配にも忠告にも、マリィ様は決して、お耳を傾けになることはございませんでした。そして、ある嵐の夜、密会を大臣に知られ、ジョルジオ様は国王への反逆罪で死刑台へと送られたのです。」

「死刑‥。それじゃ、マリィは?」

「ええ、お察しの通り、マリィ様にも同罪の判決が下されておりました。ですが‥。」


幌の無いみすぼらしい馬車に乗せられ、牢獄から死刑台へと向かう途中、マリィは悪魔の手先にさらわれたと、ミューは話した。

その後は、先程の話に繋がる。

聖なる力によって魔王と結ばれなかったマリィは、過去の記憶を消され、何百年も この楽園に留まったままなんだ。


「お可哀想なマリィ様‥。」


涙声で呟いて、ミューは廊下に崩れるように倒れた。