「綺麗‥。」
アネモネ、薔薇、コスモス、向日葵、チューリップ、百合、菫‥。
色とりどりの花々が季節に囚われず、色鮮やかに咲き乱れている。
「マリィさん‥、ここは?」
問い掛けるあたしを振り向くことなく、マリィは、目の前に咲いている水色の薔薇を見つめて
「“マリィ”と呼んでくださっても宜しくてよ。」
と、言うと
「ここは、わたくしのガーデン。“まやかしの楽園”です。 わたくしがそう名付けたの。」
感情の無い声で答えた。
「まやかし‥?」
「ええ。さぁ、城に向かいましょう。」
これ以上の質問には答えない。
そんな拒絶感を滲ませて、彼女は小道を進み出した。
黄色い薄羽を付けた妖精が米粒ほどのミニバケツをぶら下げて、目の前を飛んで行く。
「ね‥。ねぇ、マリィ!」
あたしは、彼女を呼び止めた。


