どれくらい時間が過ぎただろ。

馬の蹄の音も聞こえない、唾を飲み込む音さえ響きそうな静かな馬車の中に光りが射してきた。


─ うぁ‥


ほんの数秒前まで、星の無い煌めく夜空だけを映していた小窓に顔を向けて、息を飲む。

小さな窓の向こうには、美しい花々が咲き乱れ、その庭園の真ん中に神々しいまでに光り輝くお城が聳(ソビ)えていた。


「到着致しましたわ。魔王の花嫁候補様。」


マリィの声と同時に扉が開いた。

あたしは彼女に続いて馬車を降り、お花畑に挟まれた金色の小道に立った。