「マリィ、頼んだぞ。」

「ええ、セト様。」


あたしには不可解な会話を二言三言、その女性と交わしたあと、セトは振り向き

「彼女は、マリィ・リマ。お前を ある場所へ案内してくれる。ここから先、オレは進むことが出来ない。幻想の世界を満喫して来いよ。」

と、楽しげに言った。


「なに?どゆことよ?」


返事を期待したわけじゃない。

条件反射で訊いただけ。


「さぁ、お乗りなさい。魔王の花嫁候補様。」

「あ、はい‥。」


拒否したところで、どうにもならない。

答えをくれないセトにアカンベをして、マリィ・リマに促されるままに、あたしは真っ黒な馬に繋がれた歪な形の馬車に乗り込んだ。