彼は、何も答えなかった。
ゆっくりと近付いて来ると、ベッドの端に腰掛けた。
そして、上体をこちらに傾けて手を伸ばし、あたしの頬に触れた。
瞬間、恐怖にギュッと縮まる心臓。
冷たい彼の指先に全身が凍りつくような気がした。
─ オレに殺させろよ ─
不意に、その言葉を思い出し、あたしは身動きが取れなくなった。
「どう?まだ死にたい?」
優しい声で、彼が尋ねる。
「あんなの冗談だし‥。」
答える声が微かに震えた。
「だよな。男にふられたくらいで死にたくなるなんて、馬鹿げてるよな。」
銀髪男は、そう言ったあと
「忘れさせてやるよ。」
と、囁いた。
─ え?
ココロに隙を作った瞬間だった。
彼は突然、あたしから羽毛の掛け布団を剥いだ。


