瞬間、キュンと胸が軋んだ。

あたしは彼の腕から逃れようと、身をよじった。

だけど、無駄な抵抗。

セトは更に あたしを引き寄せた。


黙ったまま、文字盤だけの時計に視線を遣る彼。

その横顔を見つめて、切なくなった。


もしも、セトが吸血鬼に化けた悪魔で‥

悪魔自身があたしを探しに来た‥なんてカラクリがあれば‥

そしたら、あたしは躊躇うことなく悪魔の花嫁になるのかな‥

セトの花嫁になるのかな‥


ん?セトの花嫁?

昭和の懐メロに、そんな歌があったような‥

それにしても、なんで魔王の花嫁になるあたしと、セトはデートするの?


考えながら、あたしも時計を見ていた。

いつもは左回りの数字がスッと右回りに動いた途端、体の中心に圧力を感じ、言葉を発する間もなく、あたし達はユニバーサルスタジオにいた。