悪魔と結婚したからと言って、普通の主婦のように家事をするわけではない。
包丁を片手にホルスは、そう説明した。
身の回りの世話は、全て従者が行う。
花嫁は、ただ魔王の寵愛を受け子どもを産むだけ。
サタルドを人間界へと放つために‥。
「なら、なんで‥?」
「それは、ホルスには分かりかねます。ですが、どんなことも出来ないよりは出来る方が良いのですよ、お嬢様。知識や技術は、身に付けていても邪魔にはなりませんからな。」
答えると、ホルスは、あれこれと指示を始めた。
家事は嫌いじゃないけど、悪魔に気に入られるために それをするんだと思うと気持ちは萎える。
自分で作った料理も、一人で食べるんじゃ味気ない。
朝食を作って掃除や洗濯をして、午後には昼食作り。
ランチのあとは、何故かホルスの指導で着物の着付けや茶道までやらされた。
「良い御点前で‥。」
なんて、真顔でお茶を啜るホルスに吹き出しそうになった。


