翌朝、目覚めた時にもセトはベッドにいなかった。
きっと、もう身体検査の役目は終了したんだ。
勝手に体に触れられる度に、あんなにムカついていたのに、今のあたしは、いつもと違う朝に物足りなさを覚えていた。
──コンコンコン
不意に、ノックの音が響いた。
続けて
「おはようございます。ロナ様、お風呂の用意が出来ておりますが‥。」
と、ホルスの声が聞こえた。
「ありがと。」
左手首に嵌まったブラッディキスは、昨夜と変わらぬ輝きを今も保っている。
でも‥
確かパワーストーンは、お湯に弱いはず‥
「ね、このロザリオは外して入ればいい?」
ドア越しに尋ねると
「いいえ。花嫁に選ばれた以上、外すことは不可能でございます。」
ホルスは答えた。


