あたしを選んだのはセトじゃない。
セトは、黒魔導士が選び出した花嫁候補を、魔王に命令されて さらいに来ただけ。
彼を裏切り者だと罵った、サラマンドラの言葉が引っ掛かる。
あたしに話せない何かが、セトにはあるのかもしれない。
「イヤなヤツ!黒魔導師って!!でも、もし、あたしが逃げたら、どうなんの?」
何も気付いていないフリで、問い掛けた。
セトは、ちょっぴり呆れた顔をした。
「逃げることは出来ねーよ。そのロザリオは魔界と繋がってる。言わば、GPSだな。禁戒の術を施さない限り、どこにいたって見つけ出すことは簡単だ。」
期待通りの答えをくれた彼に、しかめっ面を作って、あたしは大きく溜息を吐いた。
「分かった‥。覚悟決める。なればいいんでしょ!悪魔の花嫁に!それがトカゲ男から助けてもらった条件やもん。ね?」
好奇心旺盛な性格も、確か花嫁の条件にあったはず。
あたしの胸の内に、セトが気付かなければいいけど‥。
そんな不安を他所に、セトは悪戯な笑みを見せ
「明日はデートだ。オレとな。」
そう言い残し、マントを翻して屋敷の中に消えた。


