Bloody Kiss♡



あたしを選んだのはセトじゃない。

セトは、黒魔導士が選び出した花嫁候補を、魔王に命令されて さらいに来ただけ。


彼を裏切り者だと罵った、サラマンドラの言葉が引っ掛かる。

あたしに話せない何かが、セトにはあるのかもしれない。


「イヤなヤツ!黒魔導師って!!でも、もし、あたしが逃げたら、どうなんの?」

何も気付いていないフリで、問い掛けた。

セトは、ちょっぴり呆れた顔をした。

「逃げることは出来ねーよ。そのロザリオは魔界と繋がってる。言わば、GPSだな。禁戒の術を施さない限り、どこにいたって見つけ出すことは簡単だ。」


期待通りの答えをくれた彼に、しかめっ面を作って、あたしは大きく溜息を吐いた。


「分かった‥。覚悟決める。なればいいんでしょ!悪魔の花嫁に!それがトカゲ男から助けてもらった条件やもん。ね?」


好奇心旺盛な性格も、確か花嫁の条件にあったはず。

あたしの胸の内に、セトが気付かなければいいけど‥。


そんな不安を他所に、セトは悪戯な笑みを見せ

「明日はデートだ。オレとな。」

そう言い残し、マントを翻して屋敷の中に消えた。