煌めく夜空には、赤く光る月。
鮮血のような赤は透明感を帯び、まるでルビーのように輝いていた。
「来るぞ。」
呟くセトに、その意味を尋ねようとした瞬間だった。
一層、輝きを増した月は、今いる空間を明るく照らした。
そして、一筋の光りをセトに向けて放った。
咄嗟にセトを振り向いた。
赤い月光は、セトではなく書物へと伸びていた。
表紙に嵌め込まれたロザリオがキラキラと輝き出す。
あの時、古びて見えたロザリオは月の光を吸収し、精気を取り戻したように煌めいていた。
「今宵、暗黒のパワーストーン、ブラッディキスは選ばれし花嫁の元へ‥。」
セトの言葉が合図のように、表紙から深紅のロザリオが外れた。
そして、ふわりと宙に浮いたかと思うと、月の光を纏ったままのそれは あたしの左手首に嵌まった。


