「 しあわ…セイション… 」




ピアノ教室じゃなくて、しあわセイション?
訳が全く分からず見上げると
家の大きな窓からこっちをじっと見てる猫と目が合った。

その白と黒の猫は長い尻尾をゆらりと揺らし
エメラルドみたいな緑色の瞳をじっとこちらに向けている。


猫の隣に一枚のポスターが貼られていて
そこにはピアノ教室と書かれている。




「 やっぱり ピアノ教室 … なのか ? 」




謎すぎるとはいえ、
とりあえず話を聞いてみない事には何も分からない。

カチャ…

小降りになった雨に傘を閉じ、
桜と雨粒でデコレーションされた傘を軽く振ると雨と桜の匂いがふわりと舞った。


「 そんなに見つめなくていいよ 」



入り口玄関まで続く階段を上る俺の姿を
猫が吸い込まれそうな瞳で見ている。