胸が震えていっぱいになって、気持ちの行き場を求めるように、絵里花は史明を抱きしめ返した。そんな絵里花に応えるように、史明は絵里花を懐に閉じ込めて、キスを繰り返す。
お互いがお互いのことしか見えなかった。この世界の中に、二人だけしかいないような感覚になった。この時間が永遠に続けばいいと思った……。
「きゃああああっ!!!」
その時、夜の闇をつんざいて女性の悲鳴が響き渡った。
キスに夢中になって夢見心地だった二人は、反射的に唇を離し、我に返ってお互いの顔を見合った。
「……えっ、絵里花ちゃんを離しなさいよ!!このっ……変態野郎!!」
続いて投げかけられたこの言葉に、さらに驚いて、声の主を探す。
するとそこには、小太りの中年の女性が仁王立ちして血相を変えていた。
「はっ、橋本さん!?」
それは、絵里花が幼い頃から可愛がってくれている隣人のおばさん。見たところ、近くのコンビニまで買い物に出たという感じだった。
濃厚なシーンを目撃された恥ずかしさにあたふたしながら、絵里花は史明の腕の中から飛び出した。
「……ち、違うんです。この人は私の彼氏なんです」
「えっ……?!」
橋本さんは、しげしげと史明を眺めまわして、顔を赤くした。



