期待と不安が入り混じって、絵里花の心臓がまた激しく脈打ち始める。
別れた場所でたたずんだまま、史明の様子を見守っている絵里花。史明が息を弾ませてその前に立つと、絵里花はその行動の意味を問うように史明を見上げた。
絵里花の眼差しを受けて、史明は口を開きかけた。けれども、胸の内は何も言葉になって出てきてくれない。言葉の代わりに、さらに一歩踏み出すと絵里花の腕を引いた――。
絵里花が驚いて目を見開いたときには、二人の唇は重ねられていた。
驚きが絵里花の体中を駆け巡る間にも、史明は自分の行為を押し通すように、絵里花を懐に抱え込んでギュッと力を込めた。
絵里花の中の戸惑いが消えて、なにも考えられなくなる。重ねられた唇の感覚だけが、絵里花のすべてになる。
たった一部しか触れ合っていないのに、史明の想いが流れ込んでくるようだった。研究に向き合う時と同じように、ただただ純粋で真っ直ぐな想い……。
――こんなにも、岩城さんは私を好きでいてくれてる……。
深いキスの中に、絵里花はその真実を見つけ出す。安堵感と嬉しさが絵里花の全身を満たしていく。そして持て余してしまうほどの愛しさが募ってくる。



