「…?!お会いしたことありますか?…ええっ〜!?」
頬を薔薇色に染めながら、今日子は嬉しそうに顔を輝かせた。
「覚えていなくてすみません。どこで会いました?…ゆっくりお聞きしたいんですけど……」
〝誘われてる〟と勘違いしている今日子の、乗ってくるような口ぶりに、史明は呆れて閉口してしまう。『ダサすぎる』と言っていたはずなのに、見た目が変わっただけで〝その気〟になってしまうなんて、人間としての底の浅さに哀れささえも感じてしまう。
そもそも一緒にいたはずの崇はどこに行ったのだろう?
するとその時、店に入ってきた男が店内を見回して、今日子の背後から声をかけた。
「今日子?どうかした?」
崇の声が聞こえた瞬間、今日子は驚いて肩をすくめた。
「ううん、なんでもない」
とっさに今日子はそう答えたけれども、決まりが悪くて振り向くに振り向けない。少し様子のおかしい今日子を不審に思ったのか、崇は今日子を覗き込むと、それからその視線を向かいに立つ史明へと向けた。
「先程はどうも」
史明は崇へも口角を上げて会釈をすると、崇もつられて軽く頭を下げたが、
「……先程……って?」
史明の言葉の意味が分からず首をひねった。やっぱり崇も、史明が先程のレストランにいた男だとは思いもよらないみたいだ。



