今日はクリスマスイブ。そして、念願の史明との初デート!
絵里花は冷静を装いつつ、心の中では小躍りしながら収蔵庫を後にした。取るものもとりあえず、スマホを持つと史料館研究室の寒々しいベランダへと出る。そこで早速、〝あの〟レストランへ電話をかけてみた。


「申し訳ございません。あいにく、本日は満席となっております」


これは、想定していたことだった。でも、絵里花はあきらめきれなかった。あのレストランは、クリスマスには特別なライトアップがされていて、そのロマンティックな光景を史明と一緒に眺めたいと思った。


「キャンセル待ちをすることはできますか?」


そう尋ねてみると、「難しいとは思いますけど」と前置きをされながらも、一応申し込みを受けてくれた。

通話を終え、息をつく暇もなく、絵里花はトイレに駆け込んで化粧を直した。手早く、だけど丁寧に。やりすぎると史明に『綺麗だ』と思ってもらえなくなるので、絵里花はいつも気を遣っていた。

それからロッカーに向かい、コートを着てバッグを掴むと、エレベーターの中も走りたくなりながら、通用口へと駆け付けた。