彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜




次の日は、クリスマスイブ。絵里花は準備を万端に整え、決意も新たに出勤した。
職場に現れた絵里花の姿。派手ではないのに、そこはかとなく匂い立つような絵里花の可憐な美しさに、史料館の職員たちは一同に息を呑んだ。


「おや、望月さん。髪を切って一段と綺麗になったね。……さては、今日は仕事帰りにデートでもするのかな?」


副館長のこんなセクハラ臭のするコメントに、いつもは眉をしかめるところだけれど、今日の絵里花はにこやかに笑って返した。副館長が勘ぐるまでもなく、デートはするつもりだ。

そもそも副館長が何と言おうと、絵里花が気にするところではない。化粧室に立ち寄り、鏡に映った自分を見て、絵里花は「よし!」と頷いた。思いのほか可愛らしくて、自分でも似合っていると思った。

反応を見たいのはただ一人、史明だけ。このすっかり変化した絵里花の姿を見て、史明がどんな顔をするのか……。


『似合ってるよ』


そう言ってくれる場面を想像しただけで、エレベーターの中の絵里花は一人でにやけてしまう。


そして、収蔵庫の重い扉を開けて、そこに愛しい人の姿を探す。すると、いつもそこにいるはずのテーブルに、史明はいなかった。