彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜



絵里花は黙々と歩きながら、そう自分に言い聞かせて、心の中に充満している寂しさを、懸命に昇華させようとした。


その時、ふと歩いていた絵里花の足が止まる。
目に映るその店の明るいながらも趣のある玄関には、さりげなくクリスマスの飾り付けがされていた。その玄関を入った先の光景も、絵里花は知っている。広い店内が開け、壁一面大きなガラス張りの向こうには季節の花々が配された美しい庭がライトアップされている……。

そこは、かつて絵里花が見つけて、お気に入りだったレストラン。去年こそは来ていないけれど、毎年クリスマスにはこのレストランに崇は予約を入れてくれていた。


崇といた時を懐かしんで、あの時に戻りたいわけじゃない。だけど、絵里花はどうしても、このレストランに来てみたくなった。崇とではなく、史明と――。


こんな願望を持ってしまうから、史明に対して寂しさを感じなければならなくなる。それは分かっているけれど、何度自分に言い聞かせても、こんな願望は尽きることがない。

だけど、歴史に関する話題以外では取り付く島もない史明を、どうやって誘い出せばいいだろう?そもそも、こんなところでクリスマスにデートなんて、あの史明が乗り気になるとは思えない……。