「だけど、好きになってもらう努力なら、今までだって……」


それは絵里花自身、散々してきたつもりだった。だけどそれは、一向に功を奏している様子はなく、なぜ史明が絵里花のことを好きになったのか未だに謎だった。

…というより、礼子の持論を聞いていると、あのキスも抱擁も絵里花を説き伏せる手段で、初めからその行為に恋愛感情なんて存在していなかったのかもしれない……と、思えてくる。


「多分、絵里花が普段している〝女磨き〟は、打算で結婚相手を探している男には効果があるかもしれないけど、男の恋心を刺激するには、あんまり意味がないのよ」


百戦錬磨の礼子の達観した見解に、絵里花は恐れ入って言葉が返せない。そんな絵里花に、礼子はしたり顔でニンマリと笑った。


「男がドキッとするポイントは、別のところにあるの。手当たりしだいに誘惑しても引かれてしまうし、相手は頭のいい人だから、用意周到に作戦練らなきゃね。大丈夫、絵里花は見た目でアドバンテージがあるから、全然余裕よ」

「……はぁ……」


ただただ圧倒されて、絵里花はため息のような声を漏らした。そんな絵里花に礼子は、それから時間を忘れてじっくりと、自分が今まで培ってきたノウハウを伝授した。