ところが当の絵里花は、そんな状況はいつものことだからか気にならないらしい。スマホをいじって俯いたりせず、凛とした立ち姿で礼子を待っている。そんな絵里花は、礼子の目にもすぐに探し出せた。


「やだ、絵里花。目立ちすぎ。んもう。いつもの居酒屋で落ち合えばよかった!」


絵里花の前に立った礼子は、開口一番にそう言った。


「…え?なにが?……どうして?」


そんな言われようをする意味が分からなくて、絵里花は戸惑ってしまう。


「あなたと並んで歩いてたら、私なんかめちゃくちゃショボい女に見えちゃうじゃないのよ!」


と言う礼子自身も、かなり気合いの入った出で立ちだった。


「もしかして……、デートだった?」


並んで歩きながら絵里花は遠慮がちに、ちょっと不機嫌そうな礼子に問いかけた。


「デートだったら、絶対そっちを優先するけど。でも、今日は週に一度のお楽しみの日だったのよ」

「あら、ゴメンね。お楽しみって、なんだったの?合コン?」

「……ちょっと。いくら私でも、週一で合コン…って、そんなガッついてないわよ。毎週水曜日はね。仕事帰りにお寺に行って、座禅をするの」

「へぇ~、座禅!?どういう心境の変化?自分を高めたくなったの?」