ねぇ…
楓ちゃん

都会で
のし上がるのは
並大抵のことじゃ
ないのよ

それは厳しい
生存競争の世界よ

覚悟決めて当たり前

紺野に
腹をくくらせたのは

楓ちゃんよ

あなたが
いなかったら

今頃
本当に

紺野は

落ちぶれて
どうしようも
なかったでしょうね



…アタシ
愛されてなんかない…

抱きしめられた
記憶すらない



なら
今から
抱きしめて
もらえばいい


いいわね…

私は離婚して
子供も居ないから

紺野と楓ちゃんが
羨ましいな


…おかーちゃん
…どんな感じ?
やっぱり
…落ち込んでる?


そりゃ少しは
落ち込んでるわよ

でも
幸いなことに
会社もマスコミも
なんとかなったわ

あなたのおかーちゃんは
大丈夫!


ありがとう…
木野さん




アタシは
木野さんが好きだ

この人は
一本
筋が通ってて
賢くて
上品で洗練されてる

木野さんが
おかーちゃんの
傍にいてくれれば

おかーちゃんは
本当に大丈夫だと思う









マンションには
すっぴんの
おかーちゃんがいた


かえちゃん
ごめんねぇ


ぷかぷかと
タバコをふかして

脱力しきった
おかーちゃんが
そこにいた

木野さんは

私も帰って休むわ

と言って
アタシを送り届けて
すぐに去って行った


かえちゃん
田舎…
帰っていいよ


おかーちゃんは
アタシに
丸めた背中を向けて
寂しそうに言った


…まだ
帰んないよ…



…かえちゃん
こんな
おかーちゃんで
ごめん…



…いいよ
謝んなくて



こんな
寂しい
おかーちゃんの姿
見るの
初めてだ

おかーちゃん
実は
孤独かもね


ご飯…
食べに連れてって


アタシ
やっと
ご飯を食べたい
って思える

それに
アタシ

生まれて初めて
おかーちゃんに
自分から
お願いした

−ご飯
食べに連れてって−
って