ぼっとしたまま、その日は早あがりした。
 やめるとわかった子は指名客をつけないように、ヘルプまわりと早上がりをさせる。夜の常識。
 
 私が円満に辞めるためには、それに耐えて1カ月はたらかなくちゃいけない。途中で飛べば、給料はもらえないし、地域のキャバクラでは働けなくなるかもしれない。

 夜をやめる私には、あんまり関係ないことだったけど、中村さんとの思い出の場所にいやな記憶を作りたくなかった。

 ゆめちゃんとの思い出だってある。みみさんとの出会いだってある。

 やめると決めて振り返ると、私はいろんな人に支えられてきたことに気がつける。

 そんな人たちとの出会った場所を、私の記憶の中に楽しい場所として残しておきたいから・・・1カ月、働く。

 
 短いようで、長い1カ月。