席に戻ると、中村さんは末期症状だった。


『ゆうなーっ、んー、うみゅー』


…えっ…

中村さんっ、うみゅーってなんですかっ!!!


なんで、にゃんにゃんなんですかっ!!


店長が真っ赤な顔でいう。

『ごめん、中村に飲ませすぎちゃったよ』


あのっ…


『ゆうなぁ。うみゅーっ』

中村さん、口がとがってますっ、

タコみたいになってますっ、


…でも…
可愛いっ。

萌ってこんな気分なのかな。

なんて考えたりして。

『中村さんー酔っぱらいなんですか??』

『うみゅー』


そのあと中村さんは、
うみゅーを繰り返して


急にふわっと中村さんの香水のにおいがして

髪の毛が顔に当たってくすぐったくて

中村さんの体の重さが私にもたれかかった。


『ゆうなぁー』

甘えた声をだす中村さんの顔は、すごく近くて


私のやっと静かになった心臓が

また活発に動き始める。


呼吸のたびに中村さんの香水のにおいがして、


心臓がギュッってする。



居酒屋の、みんなが騒ぐガザガサの空間の
壁ぎわのすみっこで思う。






やっぱり私、
この人が好き。