「あさみ、ごめん、患者さんから帰りがけに相談聞いちゃって」 息をきらして走ってくる、はじめ。 私はわざと怒った顔で迎えた。 「もうっ、遅いっ」 夜になって吹きはじめた北風が、私の体をぶるっとふるわせる。 「冷えちゃったな、ごめん」 そういって、駅前なのに私の体をだきしめた。 「・・・あったかい・・・」 「かえろ。」 はじめは私の頭をなでてから、手を引いて歩き出す。