「埜上潤一」



「のが、み……さん」



「ん?」



「あの、間違えたらごめんなさい。あの……もしかして、昔グラフィック展で大きなベニアのアート作品で大賞獲った人ですか?」



「んー……」



「原色だけなのに異様に攻撃的な闇を表現した……あれ、あんまりやる人ってか、あんな壮大なの、私観たことなかったです」



「そんなこと、あったかな?」



埜上さんは恥ずかしそうに苦笑している。え?こんなに可愛く笑う人だったの?



「私、その作品観て美術やりたくなったんです!」