「眠くない?」 「いえ、逆に目が冴えました。すみません、お時間、私のせいで無駄遣いさせてしまいました」 「帰れる?」 「はい、ありがとうございました」 「じゃね、気をつけて」 彼は立ち上がった。私はふと、寂しい気持ちになった。もっと話していたい。もっと彼のことを知りたい。でもそれは我が儘。身の丈に合っていない。せめて……。 「あの……」 「ん?」 「あなたの、その、嫌じゃなければ……お名前を教えて貰えますか?」