「......嘘だろ...」
 そう。そこにあったのは、もはや綺麗を通り越し、妖艶をも通り越し、国宝と言われるに等しいだろう顔の女だった。
 言い合いを無視していたビリーでも、彼女の顔面には釘付けだった。
「...はぁ」
  数秒間、レイチェルの顔から目を離されずにいると、溜め息が聞こえてきた。
 その溜め息に、全員が我に返る。
「やっべえ...」
 そういったのは、ジュラだった。
 私含め、二人は、彼女の溜め息にびくびくしてしまって、声が出せずにいたが、彼だけは違うらしい。
「......レイチェル」
 あくまでも、彼女は依頼人。あくまでも、私たちは商売人。レイチェルの顔面が美しかろうが、私たちの立場が動くことはない。
「一応、了承したわ。早速準備するけれど、詳細は後々伺います」
「ああ、ありがとう」
 そう言い残し、レイチェルは出入り口に向かう。そして
「レイチェル!」
 言い合いの時のような態度は跡形も残っていないジュラは、彼女を呼び止める。
「なんだ」
 ジュラに向き直し、返す。
 そうしたら
「好き」