「おーい!琴音!」

…って、呼んでも反応があるわけないか。

「琴音!」

俺は、彼女の肩を優しく叩いた。

「…?」

彼女は、こちらを見た。

それはまるで、「誰だこいつ」みたいな目で。

「琴音、俺は、真紘って言うんだ!」

こんな自己紹介も、何回目だろう。

俺らは、会うのが初めてじゃないのに。

「ま、真紘…」

彼女は震えた声でそう呼んでくれた。

「おう!」

俺は元気よく応えた。


同じクラスの、森山 琴音。

昨日も、たくさん話した相手だ。


「ま、真紘、こ、れからよ、ろしく」

彼女は、そう言った。