あの日。
とてつもなく後悔した日。そんな日が人生の中でどれほどあるだろうか。あの時ああしていれば。
あの時あんな風にいってれば。
たら、れば、そんなふうに思うのは自由で、簡単だけどその日に戻ってやり直すことは出来ない。
1度起こったものは起こったままで、無くなったことには出来ない。もちろん後悔は、乗り越えてから消えていくもの。けれどもちろん消えない後悔だって出てくるわけで、俺の心の中にはひとつの後悔が居続けている。あの時、もしもあいつに文句を言ってなければ。あの時、俺が少しでもそばにいられたら。あの時、俺が家まで連れて帰ってたら。あいつはもっとながく俺の隣にいられたんだろうか。
今頃そんなふうに思っても仕方がないか。
かわいた目覚ましの音が響く中、ぼんやりとした目で外を見つめる。あの日からいつもそう思っている。見る夢はいつでもその夢で、目覚めるといつも涙で視界がぼやけている。日常の1部となった非日常な朝。不思議な感覚がいつでも俺を襲う。遠くで聞こえる鳥の声で現実に戻り、慌てて着替え出す。大きな花束をもち、病院へ向かう。13階の1番端の部屋。一人部屋にひっそりと眠っているのは高木原萌。俺の彼女だ。約1か月前高木原萌は居眠り運転していたトラックに突っ込まれた。1人で学校から帰っていた時だった。その直前に俺は萌と喧嘩していた。たしか誕生日の何かで。しょうもないことで喧嘩した、そんな後悔が俺を襲い、悔やむ気持ちに取り憑かれそうになる。1ヶ月たった。いや、まだ1ヶ月しか経っていない。昨日のことのように覚えている。あの時に、喧嘩なんてしなければ。あの時、もう知らない、そんな言葉をかけなければ。あの時、謝って一緒にかえっていれば。何か運命が変わっていたのかもしれない。呼吸器やら点滴やらを付けている萌は、笑っているように見えて、泣いているようにも見える。俺の思い違いなんだと思うしかないと思っている。萌には母も父もいない。だから、俺が話を聞いた。あと1週間以内に萌は目覚める。けれど、萌は1ヶ月以内には死ぬ。聞いた時に俺は何を思ったと思う?なんか映画みたいだなと思った。映画。それにめちゃくちゃ涙を誘う感じな映画。萌は被害者、つまり俺は加害者。俺のせいだ。俺のせいで萌は死ぬ。俺があの時あんなことをしたせいで萌は。これを聞いたのは一週間前。この一週間後悔しまくった。たらればが俺の中でグルグルとまわり、何度も声を上げて泣いた。マンションのとなり部屋からは苦情が来た。泣き声がうるさいと。それに、気がついたら道路で寝ていた。泣きすぎで頭がイカれたのかもしれない。本気で自分を心配した。あと、学校にもいった。萌と俺は高校3年性。今は11月。センター試験まっただ中。俺は退学届けを出してきた。少しでも萌と同じ時間を過ごすため。でも、萌には辞めたことは言わない。だって心配させてしまうから。私のせいだ、なんてそんなふうに思って欲しくない。そんなふうに思うのはおれだけでいい。それに萌のことも考えないといけない、そう思い何ができるか考えた。そして思いついた答え。萌に嘘をつくことだった。死ぬなんて聞いたらきっと憂鬱な思いで1ヶ月を過ごすだろう。そんなことをするくらいなら、嘘をついてたのしい1ヶ月を過ごした方がマシだと思う。だから、萌が好きな物、好きな曲、好きな場所、思い当たる全てを考えてたくさんのプランを作った。そして今日。おきる可能性が1番高い日、それと同時に余命のことを話さないと行けない日。
しかし俺は、嘘をつくことにした。萌は元気なんだ、という嘘。萌は最後まで笑顔でいてほしい。そんなふうに思った。だから、俺は萌のために嘘を貫き通す。それからなん時間が経っただろうか。ずっと萌の手を握りながら眠っていた。重たいまぶたを開けながら萌の顔を見る。目が合った。あぁ、へ?目が合った?萌は起きていた。
萌は「久しぶり」そう言いながらゆっくりと、にこりと笑いかけてきた。『久しぶり』つられて俺も笑顔になる。
「あいたたたた…頭が痛い…」トラックでうった頭を擦りながらゆっくりとおきあがる。直ぐに医者がやって来て軽い検査をした。やはり状況は変わっていなかった。脳に血の塊が出来ている。強い衝撃で頭をうったせいで大事な血管が機能していないそうだ。手術はできない。なんだか、それを手術するにはもうひとつの大きな血管を避ける必要があるらしいが今の技術ではそれは不可能らしい。
『萌、落ち着いて聞いてね、お前は…』
「トラックにはねられたんだよね?」
淡々と、事実だけを述べる萌に俺は驚いた。経験はないが、そんなことを体験したら普通怖がらないのか?
『そっ、そう、頭大丈夫?』
「うん、私元気なの?」
いきなり核心を着いた質問にまた驚き、喉を潤すためにそこにあった水を飲む。
『うん、元気!元気すぎるくらい』
これはお前のための嘘。許して欲しい。そう思いながらもう一度水を飲み直す。
「そっか…」
呟くように、けれど少し嬉しそうに外に視線をうつす。その姿を見て胸がズキンと痛む。俺は、これで良かったのか、そう自分に問いかけながら萌に話しかける。
『どこか行きたいところある?』
「急だね、」
少し驚いたように、でもはにかみながら俺を見つめる。頭をかしげたり、手で髪をクルクルしながら話を進める。
「んー、遊園地!」
最後に出した答えはそれだった。
『もちろん、おっけー、じゃ明後日行くぞ』
「え?学校は?」
『サボる』
「…ミッションみたいだね、なんか」
『よく分からんわ』
ハハッと笑ってみせたが、笑える話じゃない。これは萌の余命までを楽しく過ごさせるため。死ぬまでのカウントダウンを少しでも楽しいものにさせるためだった。萌はきっと思ってるだろうな、なんで急に?って。でも、聞かないのは何かを察してくれているためだろう。俺は萌のそこに惚れた。なんか、いい子だなーっていうのが第一印象。それからは猛アタック。3回目の告白でやっとおっけーを貰えた。萌は俺のことを好きなのかよく分からない。好きって言うのはいつも俺で、萌からは言われたことは無い。誘うのも、話しかけるのも、いつでも俺だった。萌は感情をあまり出さないため、俺には喜んでいるように見えるのに、実は怒ってたり、悲しんでるように見えて、楽しんでたりした。なんだか不思議なやつだった。
でも、萌のことを俺は好きだった。だから、今も隣にいてやれるんだ。
「じゃ、準備しとくてか、いつ退院?」
『明日にでも大丈夫だってさ』
これは本当。この1ヶ月を楽しく過ごさせることに医者も賛成してくれた。発作なんかはないらしく、薬を飲んでさいいれば大丈夫らしい。なのに手術出来ないとか、笑える。
『じゃ、明後日お前ん家いくわ』
いたたまれない気持ちになって、病室をあとにした。萌は表情が変わらない。でも今のはわかった。喜んでいた。珍しく、全面に笑顔を出した。
可愛い、そう思った反面、可愛そうだそう思ってしまった自分がいる。可哀想。そんなことを思われるのは1番嫌なはずなのに。俺はまた最悪なことをした。また後悔が駆け巡る。最近飯が喉を通らなくなった。ダルい。すごく体がだるい。
そうして気がつけば今日が遊園地に行く日になっていた。ゆっくりと着替えて、ゆっくりと歩き
とてつもなく後悔した日。そんな日が人生の中でどれほどあるだろうか。あの時ああしていれば。
あの時あんな風にいってれば。
たら、れば、そんなふうに思うのは自由で、簡単だけどその日に戻ってやり直すことは出来ない。
1度起こったものは起こったままで、無くなったことには出来ない。もちろん後悔は、乗り越えてから消えていくもの。けれどもちろん消えない後悔だって出てくるわけで、俺の心の中にはひとつの後悔が居続けている。あの時、もしもあいつに文句を言ってなければ。あの時、俺が少しでもそばにいられたら。あの時、俺が家まで連れて帰ってたら。あいつはもっとながく俺の隣にいられたんだろうか。
今頃そんなふうに思っても仕方がないか。
かわいた目覚ましの音が響く中、ぼんやりとした目で外を見つめる。あの日からいつもそう思っている。見る夢はいつでもその夢で、目覚めるといつも涙で視界がぼやけている。日常の1部となった非日常な朝。不思議な感覚がいつでも俺を襲う。遠くで聞こえる鳥の声で現実に戻り、慌てて着替え出す。大きな花束をもち、病院へ向かう。13階の1番端の部屋。一人部屋にひっそりと眠っているのは高木原萌。俺の彼女だ。約1か月前高木原萌は居眠り運転していたトラックに突っ込まれた。1人で学校から帰っていた時だった。その直前に俺は萌と喧嘩していた。たしか誕生日の何かで。しょうもないことで喧嘩した、そんな後悔が俺を襲い、悔やむ気持ちに取り憑かれそうになる。1ヶ月たった。いや、まだ1ヶ月しか経っていない。昨日のことのように覚えている。あの時に、喧嘩なんてしなければ。あの時、もう知らない、そんな言葉をかけなければ。あの時、謝って一緒にかえっていれば。何か運命が変わっていたのかもしれない。呼吸器やら点滴やらを付けている萌は、笑っているように見えて、泣いているようにも見える。俺の思い違いなんだと思うしかないと思っている。萌には母も父もいない。だから、俺が話を聞いた。あと1週間以内に萌は目覚める。けれど、萌は1ヶ月以内には死ぬ。聞いた時に俺は何を思ったと思う?なんか映画みたいだなと思った。映画。それにめちゃくちゃ涙を誘う感じな映画。萌は被害者、つまり俺は加害者。俺のせいだ。俺のせいで萌は死ぬ。俺があの時あんなことをしたせいで萌は。これを聞いたのは一週間前。この一週間後悔しまくった。たらればが俺の中でグルグルとまわり、何度も声を上げて泣いた。マンションのとなり部屋からは苦情が来た。泣き声がうるさいと。それに、気がついたら道路で寝ていた。泣きすぎで頭がイカれたのかもしれない。本気で自分を心配した。あと、学校にもいった。萌と俺は高校3年性。今は11月。センター試験まっただ中。俺は退学届けを出してきた。少しでも萌と同じ時間を過ごすため。でも、萌には辞めたことは言わない。だって心配させてしまうから。私のせいだ、なんてそんなふうに思って欲しくない。そんなふうに思うのはおれだけでいい。それに萌のことも考えないといけない、そう思い何ができるか考えた。そして思いついた答え。萌に嘘をつくことだった。死ぬなんて聞いたらきっと憂鬱な思いで1ヶ月を過ごすだろう。そんなことをするくらいなら、嘘をついてたのしい1ヶ月を過ごした方がマシだと思う。だから、萌が好きな物、好きな曲、好きな場所、思い当たる全てを考えてたくさんのプランを作った。そして今日。おきる可能性が1番高い日、それと同時に余命のことを話さないと行けない日。
しかし俺は、嘘をつくことにした。萌は元気なんだ、という嘘。萌は最後まで笑顔でいてほしい。そんなふうに思った。だから、俺は萌のために嘘を貫き通す。それからなん時間が経っただろうか。ずっと萌の手を握りながら眠っていた。重たいまぶたを開けながら萌の顔を見る。目が合った。あぁ、へ?目が合った?萌は起きていた。
萌は「久しぶり」そう言いながらゆっくりと、にこりと笑いかけてきた。『久しぶり』つられて俺も笑顔になる。
「あいたたたた…頭が痛い…」トラックでうった頭を擦りながらゆっくりとおきあがる。直ぐに医者がやって来て軽い検査をした。やはり状況は変わっていなかった。脳に血の塊が出来ている。強い衝撃で頭をうったせいで大事な血管が機能していないそうだ。手術はできない。なんだか、それを手術するにはもうひとつの大きな血管を避ける必要があるらしいが今の技術ではそれは不可能らしい。
『萌、落ち着いて聞いてね、お前は…』
「トラックにはねられたんだよね?」
淡々と、事実だけを述べる萌に俺は驚いた。経験はないが、そんなことを体験したら普通怖がらないのか?
『そっ、そう、頭大丈夫?』
「うん、私元気なの?」
いきなり核心を着いた質問にまた驚き、喉を潤すためにそこにあった水を飲む。
『うん、元気!元気すぎるくらい』
これはお前のための嘘。許して欲しい。そう思いながらもう一度水を飲み直す。
「そっか…」
呟くように、けれど少し嬉しそうに外に視線をうつす。その姿を見て胸がズキンと痛む。俺は、これで良かったのか、そう自分に問いかけながら萌に話しかける。
『どこか行きたいところある?』
「急だね、」
少し驚いたように、でもはにかみながら俺を見つめる。頭をかしげたり、手で髪をクルクルしながら話を進める。
「んー、遊園地!」
最後に出した答えはそれだった。
『もちろん、おっけー、じゃ明後日行くぞ』
「え?学校は?」
『サボる』
「…ミッションみたいだね、なんか」
『よく分からんわ』
ハハッと笑ってみせたが、笑える話じゃない。これは萌の余命までを楽しく過ごさせるため。死ぬまでのカウントダウンを少しでも楽しいものにさせるためだった。萌はきっと思ってるだろうな、なんで急に?って。でも、聞かないのは何かを察してくれているためだろう。俺は萌のそこに惚れた。なんか、いい子だなーっていうのが第一印象。それからは猛アタック。3回目の告白でやっとおっけーを貰えた。萌は俺のことを好きなのかよく分からない。好きって言うのはいつも俺で、萌からは言われたことは無い。誘うのも、話しかけるのも、いつでも俺だった。萌は感情をあまり出さないため、俺には喜んでいるように見えるのに、実は怒ってたり、悲しんでるように見えて、楽しんでたりした。なんだか不思議なやつだった。
でも、萌のことを俺は好きだった。だから、今も隣にいてやれるんだ。
「じゃ、準備しとくてか、いつ退院?」
『明日にでも大丈夫だってさ』
これは本当。この1ヶ月を楽しく過ごさせることに医者も賛成してくれた。発作なんかはないらしく、薬を飲んでさいいれば大丈夫らしい。なのに手術出来ないとか、笑える。
『じゃ、明後日お前ん家いくわ』
いたたまれない気持ちになって、病室をあとにした。萌は表情が変わらない。でも今のはわかった。喜んでいた。珍しく、全面に笑顔を出した。
可愛い、そう思った反面、可愛そうだそう思ってしまった自分がいる。可哀想。そんなことを思われるのは1番嫌なはずなのに。俺はまた最悪なことをした。また後悔が駆け巡る。最近飯が喉を通らなくなった。ダルい。すごく体がだるい。
そうして気がつけば今日が遊園地に行く日になっていた。ゆっくりと着替えて、ゆっくりと歩き
