「このナイフでクラスメイトを殺せってことか」
坂木君が自分のナイフを見つめてそう言う。
「信じられない…」
結は泣いて震えながら言った。
「現に蓮が殺されたんだ、だから本当に友達を3人殺さないと、俺たちも蓮みたいに…「っやめて!!」
クラスの秀才である岡島君は冷静にそう言うが、愛来が大きな声で叫ぶ。
「こんなのおかしい!!なんで私たちがやらなきゃいけないの?どうして殺さなきゃいけないの…!!」
泣き崩れて叫び続ける愛来を友達の恵は優し背中をさすって落ち着かせる。
「美和…私怖いよ、これからどうなっちゃうのかな…」
「香穂大丈夫、こんな変なことあるはずないよ。きっと調べれば何かがわかるはず」
クラス中に重たい空気が流れ続ける。そして誰一人動くことができずにいた。
「死ぬなんて嫌だ……死ぬなんて嫌だ…」
突然、クラスの隅っこの方にいた天野君が一人で呟きはじめた。
「死ぬなんて……」
「おい天野!待て!!落ち着け!」
すると、天野君は持っていたナイフを振り回し始めた。
周りにいた男子たちが天野君を止めようとするが、ものすごい勢いでナイフを振り回していたため安易に近づくことができない。
「絶対死にたくない!!さっさと3人殺して僕は生き残る!だから死ね、みんな死ね!!!」
普段は大人しい天野君が今は人が変わったようになっている。
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」
天野君は容赦なくクラス中を走るが、みんなは叫びながら逃げ続ける。
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
そして何人かの女子は教室を飛び出して違う場所へ逃げていく。
「やめろ天野!!」
すると北野君が天野君の背後に近づいて思いっきり天野君を蹴り飛ばした。
その勢いで天野君はナイフを落とし、前へ倒れる。
落ちたナイフを坂木君は素早く拾った。
「もうこんなことはやめろ!こんなのはおかしい、調べればきっと何かがあるはずなんだ」
「うるせぇ……」
すると天野君は起き上がり、近くの人からナイフを奪い取って思いっきり北野君に近づいた。
ナイフは北野君の脇腹に勢いよく刺さり、下から血が垂れる。
「1人、殺した。あと、2人……」
ナイフが刺さったまま北野君は床に倒れた。
「光輝!!おいしっかりしろよ!!」
男子たちが北野君にかけよって声をかけたり体を揺さぶったりするが、北野君は目を覚まさなかった。
「天野、お前…」
坂木君も信じられない天野君の行動に言葉を失う。
そして天野君は次のターゲットを探すようにクラスにいた全員の顔を見回す。
『残るトモダチは28人です』
「い、いやぁぁ!!!」
人が死んでいくごとに奇妙な放送が流れ出し、みんなは勢いよく教室を飛び出す。
「天野君…どうして…」
私は、足が固まったようにその場から動けなかった。
「美和!!私たちも早く逃げないと!!」
香穂に手を引っ張られて教室から出る。
教室から出ると辺りは真っ暗で、誰もいなかった。
まるで、私達のクラスだけが別世界へ移動したように。