「もう嫌…なんでこんな目に……」
私の名前は寺田恵、そして隣にいるのは友達の愛来。
愛来とは、小学生の時に出会った。
クラスに馴染めなかった私に真っ先に話かけてくれたのが愛来で、そこから私達は一気に距離を縮めていった。
そして一緒に過ごす中でわかったことがある。
愛来は、重度の恐怖症だった。
怖い出来事があると、自分で体をコントロールすることができなくなり、異常なほど叫んだり、言語障害を起こしたり、激しい過呼吸を起こしてしまう。
だから私は、友達としていつも愛来のそばで支え続けた。
今日の朝に三嶋君が殺された時も、愛来は恐怖症の症状が出ていた。
必死に校舎内を逃げている今でも愛来の症状は治らない。
私は愛来の背中をさすりながらゆっくり歩いていた。
「ん…?」
歩いていると、右足が何かにぶつかった。
顔を下に向けると、そこにあったのは、うつ伏せになって倒れている天野君だった。
背中にナイフが刺さり、刺された周りが真っ赤な血で染まっている。
「死んでる…」
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
愛来も天野君が倒れている存在に気がつき大声で叫んだ。
「…はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
大声で叫んだ愛来は死体のすぐ側で座り込み、激しい過呼吸を起こした。
「愛来大丈夫だよ!大丈夫、私がいるから」
私にできることは、こうやって愛来の背中をさすってあげるくらいだ。大丈夫って言葉をかけてあげることしかできない。
「…いや…こんな……怖いよ…め…恵…」
愛来は過呼吸の中、涙を流した。
「大丈夫、大丈夫、私がついてるからね」
愛来は涙を流し続ける。その姿はとても苦しそうだった。